音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
Print ISSN : 1348-9038
ピアノ曲《子供とおったん》にみる山田耕筰
初版における挿絵と詩文を手がかりに
澤田 まゆみ
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 15 巻 p. 37-54

詳細
抄録

山田耕筰の《子供とおったん》は、子どもを題材として書かれた山田の最初のピアノ曲である。総合芸術を目指す文化的世相の中、楽劇や舞踊詩を多く生み出していた山田は、姉とその二人の子どもとの生活をとおして初めて平和な家庭の実在と、生活に基づいた芸術の存在を知りえてこの小品集を作曲した。1917 年大阪開成館からの初版では、斎藤佳三による挿絵と山田による詩文が添えられ、斎藤との芸術的交友や甥や姪たちへの愛情が伝わってくる。《子供とおった ん》は、当時山田が没頭していた舞踊詩とは一線を画し、後の詩と音楽の融合による歌曲や童謡を中心とする創作期との間にあって、生活に基づいた芸術の存在に気づいた山田の大きな感動と新たな創作活動に対するメッセージをわれわれに示している。

著者関連情報
© 2017 日本音楽表現学会
前の記事 次の記事
feedback
Top