音楽表現学
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武満徹《地平線のドーリア》とリディアン・クロマティック・コンセプト
宮川 渉
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2022 年 20 巻 p. 55-74

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抄録

武満徹は、ジョージ・ラッセルが考案したリディアン・クロマティック・コンセプト(以下LCC)という音楽理論から多大な影響を受けたと述べている。しかし、武満が実際LCCからいかなる影響を受けたかに関しては未だに不明な点が多く、それを明らかにすることが本稿の目的である。そのため、ここではまずLCCとはいかなる音楽理論かを確認し、次に武満がLCCを応用した作品として知られている《地平線のドーリア》を取り上げる。この点を扱ったピーター・バートの研究が既に存在するため、本稿では、彼の研究内容やその問題点を検証した上で、この研究とは異なった視点から《地平線のドーリア》へのLCCの影響について検討した。具体的には、水平的な側面においては「中心旋律」に着目し、垂直的な側面においては雅楽の影響についても分析した。その結果、《地平線のドーリア》には、旋法、「調性引力」、「パントナリティ」など、LCCで重視されている要素が存在しているという結論に至ると同時に、この作品の音組織には武満が《ランドスケープ》で追求していた笙の響きから影響を受けた和声と強い共通性があることも明らかになった。

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© 2022 日本音楽表現学会
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