本研究の目的は、音楽訓練が高齢期のテンポ同期とテンポ維持のスキルに及ぼす影響を明らかにすることである。これまでの研究ではテンポ同期とテンポ維持のスキルには音楽訓練と年齢が影響を及ぼすことは調査されていたが、高齢期における音楽訓練の影響は調査されてこなかった。本研究では、音楽訓練が高齢期のテンポ同期とテンポ維持のスキルに与える影響を調べるために、音楽熟達群10名と非熟達群10名に、250㎳-2200㎳の10 種類の異なるテンポの刺激音を用いて、 Synchronization-Continuation Task を実施した。その結果、特に遅いテンポで、音楽熟達群と非熟達群の差が顕著にみられ、音楽熟達群の方が非熟達群よりもテンポ同期とテンポ維持が正確であることが分かった。遅いテンポにおいて両群に顕著な差がみられた要因として、タッピングの細分化といった方略や自発的な動作テンポとの関連が考えられる。以上のことから、音楽訓練は、高齢期においてもテンポ同期とテンポ維持のスキルに影響を及ぼすことが示された。