2024 年 3 巻 1 号 p. 68-85
本研究では,ブルデュー社会学を手がかりとして消費者との価値共創における文化的コンテクストの役割明確化を試みる。そのために,本研究では下記プロセスにしたがって論を進める。はじめに,ブルデューによって提示された「習慣行動」とそれを構成する界・資本・ハビトゥスの各概念について検討する。次に,フランス社会学由来のこうした概念を,マーケティング研究において内在的に理解するための準備的議論として両者間の乖離を埋める手続きをとる。そのうえで,それまでに確認されたことを手がかりとして文化的コンテクストの役割明確化を試みた結果,習慣行動のあり方は文化的コンテクストに規定されることが示され,続けて文化的コンテクストに規定される行為の対象は消費行動にも及ぶこと,また文化的コンテクストは共創の担い手を介して文化的使用価値のあり方を規定することがそれぞれ示唆される。最後に,本稿において示されたことを,文化的コンテクストが組み込まれた価値共創の仕組みを用いて検証する。