2024 年 3 巻 1 号 p. 50-67
本論文は,ファストファッションが登場してからおよそ30年の間に,ファストファッション企業の成長の副産物として生み出された環境負荷に目を向け,欧州において近年展開しているエコデザイン規制の展開を整理することを目的としている。ファストファッション企業のいくつかが欧州を起源にするということに加え,衣料品の消費市場として最大規模であるのがEUであるという事情も相まって,2010年代ごろからファストファッションの環境負荷に対する問題意識が醸成されてきた。こうした事情を背景に,国連や欧州委員会は本格的な問題解決に乗り出し,積極的な関与の態度を示してきた。こうした試みが,2023年のエコデザイン規制という形で結実し,この規制が今後のファストファッション企業のマーケティング戦略に少なからず影響を及ぼすことが予想される。本論文は,欧州におけるエコデザイン規制の展開に目をむけることにより,この30年間にファストファッションが経済合理性を重視して邁進してきた結果として生じた環境負荷や,使い捨てに慣れてしまった消費者行動について再考する契機になることを期待する問題提起的な論文である。