2025 年 4 巻 2 号 p. 99-113
本論文の目的は,官報の商業登記や会社紳士録,銀行や保険会社向けの専門誌などの記事を足がかりとして,白木屋呉服店の社史の空白期間である1905年から1908年の経営の実態を明らかにすることである。白木屋呉服店は1908年に破綻寸前となった。その要因は,白木屋呉服店が大株主であった桐生織物の破綻が白木屋呉服店の資金繰りにも大きな損傷を与え,さらに,白木屋呉服店内部の商品の不良在庫化が重なったことにある。白木屋呉服店の当主の大村彦太郎は姻戚関係にあった三井家,鴻池家へ経営破綻回避に向けた支援を要請し,三井銀行側が用意した処理スキームにより白木屋呉服店の破綻は回避された。また,経営破綻寸前となったもう一つの要因である商品の不良在庫化と,経営破綻回避策と並行して実施された組織改革が頓挫した経緯・原因が,白木屋呉服店の販売の責任者であった高谷竹次郎の活動に起因するものであることを明らかにした。