2019 年 75 巻 2 号 p. I_467-I_476
社会基盤構造物において疲労が大きな問題となっており,破損事例も多く報告されている.中でも溶接継手ルート部から発生するき裂は,溶接ビード表面からの目視による発見が困難なこともあり,疲労性能支配因子の明確化と精度の高い評価手法が重要となる.本研究では,溶接継手ルート部を起点とする疲労損傷に影響を与える諸因子について数値解析的な検討を行った.具体的には,非線形 FEM 解析および線形破壊力学に基づく X-FEM 解析を実施することにより,ルート部の局所的な弾塑性挙動とそれに基づいて予測される疲労き裂発生寿命,および疲労き裂発生後の伝播挙動について考察した.その結果,応力集中の高い溶接ルート部の疲労損傷は,疲労き裂伝播過程が支配的となり,局所的な材料特性やルートギャップによる影響は小さいことを明らかにした.一方,角変形矯正が疲労寿命に与える影響は大きく,ルート部に圧縮応力を導入する付加的なプロセスによる疲労寿命延長効果が示唆される結果を得た.