順天堂醫事雑誌
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都民公開講座:腸と健康
消化とアレルギー
大塚 宜一
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2014 年 60 巻 1 号 p. 2-7

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抄録

特定の食物を食べることで繰り返す湿疹,咳,腹痛,下痢,下血,体重増加不良等の症状をきたす疾患が食物アレルギーである.食物アレルギーは「免疫反応」を介して生じる.人体に対して有害な細菌やウイルスを異物と認識して排除する反応が「免疫反応」だが,生体に必要な特定の食物を誤って異物と認識して「免疫反応」が誘導されることが食物アレルギーである.
口から摂取された食物すなわち蛋白質は腸に入り消化酵素により消化・分解される.通常,蛋白質がアミノ酸まで消化されればアレルギー反応は生じない.しかし,十分に消化されない蛋白質(ペプチド)は食物アレルギーの原因抗原となる.特に,離乳食を食べている乳幼児は消化機能が未熟で,食物をアミノ酸まで完全に消化できないことも多く,その結果,アレルギー反応が生じやすいと考えられる.
一方,ヒトには,口から摂取した食物に対してアレルギー反応を起こさないようにする「寛容」と呼ばれる機能がある.特に,乳児期の免疫機能は,寛容を誘導しやすいと考えられる.乳児期の消化機能の未熟性は,食物に対する寛容を誘導するための自然の仕組みとも考えられる.アレルギーの予防という観点からは,食物負荷試験により重篤なアレルギー症状が出ないと確認されている食物であれば,少量から積極的に食べることで寛容を誘導することができる(経口免疫寛容).また,卵白は20分程度加熱することで,牛乳はオーブンで加熱することで抗原性が抑えられることが報告されている.アナフィラキシーショックを呈することもあり,注意が必要であるが,医師の管理のもと,より安全な食べ方を見つけ,継続して食べることが食物アレルギーの治療となる.

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