抄録
と畜場由来のウシ卵巣の中から成熟した黄体が存在する27頭(対)の卵巣を用いて個体別に体外受精を行い胚の発育について検討した.また,個体別の黄体の直径・重量・小卵胞数(2~5 mm)を測定し,直径6 mm以上の大卵胞(優性卵胞)数およびその卵胞液量を測定後,卵胞液中のエストラジオール値(E2)とプロジェステロン値(P4)をRIAにより測定した.体外受精には小卵胞から得られた卵母細胞を用いた.黄体の直径は平均23.3±2.7 mm,重量は平均4.7±1.0 g,小卵胞数は平均44.4±19.6であった.1頭の卵巣には1.6±0.6個の大卵胞があり直径は平均10.7±2.5 mm,卵胞液量は平均1.2±0.6 mlであった.E2とP4の結果により,E2が50 ng/ml以上でE2/P4が1以上の卵胞が存在するウシをE2活性期(E2-A-dom),E2が50 ng/ml以下でE2/P4が1以上の卵胞が存在するウシをE2中程度の活性期(E2-dom),E2-A-domとE2-domのどちらもが存在しないウシをE2不活性期(P4-dom)と判定した.その結果,27頭の卵巣はE2-A-dom 12頭,E2-dom 6頭,P4-dom 9頭に分けられた.これらE2-A-dom,E2-dom,P4-domの3群における平均小卵胞数,平均卵母細胞数,平均卵割率,平均胚盤胞率に有意差はみられなかった(P>0.05).また,それぞれの群の中においても依然として個体間に大きな差がみられた.以上の成績から,ウシにおいて優性卵胞内のE2とP4は小卵胞内の卵子の質に影響を及ぼさないことが明らかとなった.