Journal of Mammalian Ova Research
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原著論文
Soybean Trypsin Inhibitorで処置してハッチングを抑制したマウス胚盤胞の収縮運動
新村 末雄若狭 良子
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2001 年 18 巻 1 号 p. 1-7

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抄録
Soybean trypsin inhibitor (STI)で処置してハッチングを抑制した培養マウス胚盤胞について,収縮運動の程度と回数をタイムラプスビデオを用いて観察し,ハッチングに果たす収縮運動の役割を検討した.1.0 mg/mlの濃度のSTIを含む培養液で桑実胚から発生させた胚盤胞のハッチング率は17.2%であり,無処置胚盤胞の63.9%に比べて有意に低かった.このようなSTI処置胚盤胞では,強度の収縮回数は無処置胚盤胞と相違なかったが,収縮総回数と弱度の収縮回数(4.22および2.94回)は,無処置胚盤胞の5.80および4.50回に比べて有意に少なかった.また,STI処置胚盤胞が弱度の収縮および弱度の収縮後の再拡張に要した時間は,それぞれ10.2および87.6分であり,無処置胚盤胞の7.8および58.2分に比べて有意に長いことも確かめられた.さらにSTI処置胚盤胞では,トリプシン様プロテイナーゼ活性は無処置胚盤胞のものと相違ないとともに,ハッチングの開始である透明帯での小孔も,無処置胚盤胞と同様に形成されることが確かめられた.一方,透明帯の小孔を拡張して裂け目を形成した胚の割合は,STI処置胚盤胞では37.5%であり,無処置胚盤胞の86.7%に比べて有意に低かった.以上の結果から,弱度の収縮とその後の再拡張は,透明帯に裂け目を作ることによってハッチングに重要な役割を果たしていることが推察された.
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