抄録
ブタ卵の体外成熟に及ぼす培養温度と卵丘細胞の付着程度の影響を検討した.卵丘細胞が完全にまたは部分的に付着した卵丘-卵母細胞複合体を,37°Cまたは39°Cで0-44時間培養し,減数分裂の進行と細胞骨格の分布変化について蛍光染色法により検査した.培養前(0時間)では,94-100%の卵はGV期であった.24時間後では,39°Cで37°Cに比べ有意に多くの卵がGVBDを示した.36時間目にM-IIに達していた卵の割合は37°C区に比べ39°C区で高かったが,44時間目では両区に有意差は見られなかった.完全区卵は部分区卵に比べ有意に高い成熟率を示した.蛍光染色法により、主にマイクロフィラメントで構成される卵丘細胞突起は,GVとM-I期で多数存在したが,M-II期で減少すること,また培養温度と卵丘細胞の付着程度の違いにより卵細胞質の微小管とマイクロフィラメントの分布に著差は見られなかった.以上から,培養温度が2°C低下することによりGVBDと成熟分裂の進行が著しく遅延し,卵丘細胞の付着の程度が卵成熟率に影響することが示唆された.