Journal of Mammalian Ova Research
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総説
精子核の質的評価と体外胚発生能
片寄 治男高山 智子菅沼 亮太林 章太郎柳田 薫佐藤 章
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2007 年 24 巻 4 号 p. 153-160

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抄録

卵細胞内精子注入法が生殖補助医療の中心的役割を果たしている現在,精子受精能の概念は大きく変わってきた.精子側に存在し,受精後の胚発生に影響を与える因子については近年数多くの検討がなされ,原因解明が確実に進行している.精子核についてはヒトの場合,蛋白構造上不均一な,すなわち精子核蛋白protamine内S-S結合の豊富な成熟あるいは過熟精子や,S-S結合の乏しい未熟精子がICSIの際に無作為に注入される可能性が高く,選択される精子核蛋白構造による受精・胚発生過程への影響が想定される.精子核クロマチン解析によれば,S-S結合の少ない症例ほど胚発生が良好であることが指摘される一方,精子DNA断片化の程度は胚発生異常と相関することが指摘されている.ICSIではS-S結合の少ない,DNA損傷のない精子核を注入すべきであるが,今後精子核の質に着目した精子機能検査法および良好精子核選別法の開発がさらに必要になるものと考えられる.

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© 2007 日本卵子学会
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