抄録
哺乳動物の卵細胞を取り囲む透明帯の生合成部位と時期について, 免疫蛍光抗体法と免疫電顕法を用いて調べた. ブタ透明帯の一成分であるZPlのCys-Thr-Tyr-Val-Leu-Asp-Pro-Glu-Asn-Leuを認識することが判明しているモノクローナル抗体 (MAb-5H4) を一次抗体として用い, ブタ卵巣組織の透明帯抗原を検出した. 免疫電顕により, 透明帯蛋白は一次卵胞の卵母細胞周囲にすでに不連続に形成されていることが観察された. 一方, 蛍光染色法では卵胞の成熟過程に伴って, 卵母細胞の周囲に観察される透明帯の厚みと蛍光強度が増加した. この蛍光は卵母細胞の周辺のみならず, 1-4層の顆粒膜細胞を伴う未熟な卵胞の卵母細胞の細胞質内にも認められた. このことから, 透明帯蛋白は成熟過程にある卵母細胞の細胞質内で合成されることが示唆された. さらに, 電顕観察では透明帯抗原を含む分泌小胞が卵母細胞の細胞質内に観察された. 以上の結果より, 透明帯蛋白は卵胞成熟の初期から後期にかけて卵母細胞で合成され, 細胞質内の分泌小胞によって運搬されるものと考えられた.