哺乳動物卵子学会誌
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最新号
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  • 紅林 賢臣, 三宅 正史, 河野 賢治, 宮野 隆, 加藤 征史郎
    1994 年 11 巻 2 号 p. 164-174
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    効率的に活性化を誘起する直流電圧を決定するため, 42時間体外成熟培養を行ったブタ卵母 細胞に, 100~3, 000V/cm DC, パルス幅100μsecの単矩形波を負荷した.200~1, 250V/cmにおいて'90%以上の高い活性化が認められ, 750V/cmでは最も高い活性化率 (98%) が得られた.成熟培養時間が活性化に及ぼす影響を調べるために, 36~54時間成熟培養した卵母細胞に750 V/cmの負荷電圧を与えた結果'成熟培養時間の増加とともに活性化率が上昇する傾向が認められた.培養時間が42時間以上の卵母細胞の活性化率 (94~99%) は, 培養36 (47%) あるいは38時間 (44%) より有意に高かった (P<0.01).電気刺激後, 卵子の減数分裂再開時期を明らかにするために'750V/cmの負荷電圧を42時間成熟培養した卵母細胞に与え, 経時的に固定・観察した.刺激の10分後にはAnaIIの染色体が認められ (32%), 30分後にはTelIIの染色体が観察された (32%).その後'染色体の変化は卵子間で同調して進行し, 4時間後には95%の卵子で核の形成が認められた.核形成後の活性化卵子の極体数と核数を調べたところ, 92%の卵子が第2極体と.つの核を保有する, 半数体 (2PBIN) と推測されるものであった.2PB.N卵子は, その後の培養により4細胞期以降にまで卵割した.
  • Thevin VONGPRALUB, 小柳 深
    1994 年 11 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    培地に添加したオキシトシンがマウス1細胞期胚の発生に及ぼす効果を検討した.卵丘細除去胚を10-14~10-4Mオキシトシン添加培地で培養した結果, 10-10M区の発生率は対照に比べて有意に増加し, 10-4M区の発生率は低下した.しかし, 卵丘細胞付着胚の発生には, オキシトシン添加の効果はほとんど認められなかった.さらに, 10-1Mオキシトシンの添加効果と顆粒層細胞との共培養の効果を比較した結果, 2細胞期から拡張胚盤胞期への発生率には, 両区の間に差は認められなかったが, 共培養区ではオキシトシン添加区に比べて胚盤胞期の細胞数が有意に増加した.また'共培養区へのオキシトシン添加の効果は認められなかった.
  • 戸津川 清, 斉藤 英文, 岩崎 泰造, 吉川 奈美
    1994 年 11 巻 2 号 p. 182-188
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    PCR法を用いて, 体外受精一体外培養した着床前豚胚の性判別を行なった. PCRに用いたプライマーは哺乳動物のSRY保存領域を基に作成した. 使用したセンスプライマーは5'-GTCAAGOGACCCATGAACGC-3'(20mer) で, アンチセンスプライマーは5'-CTGTGCCTCCTGGAAGAATGGC-3'(22mer) であった. 雄特異的DNAバンドは165bpで検出された.体外受精卵の33%において'雄特異的DNAバンドが検出された. 16-細胞期から胚盤胞期の胚を検体とした時, 供試胚の46.6%において雄サンプルで得られたものと同様なバンドが得られた. 得られたDNA断片をダイレクトシークエンス法により塩基配列決定を行った結果, ウサギ及びマウスSRY保存領域とは約75%, ヒトSRY保存領域とは85%以上の相同性があることが確認された.
  • Abdalla ELMILEIK, 前田 照夫, 寺田 隆登
    1994 年 11 巻 2 号 p. 189-195
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    2-5mmの牛卵胞から採取した卵胞液あるいはその画分を添加した培地で成熟させた牛卵胞卵子の成熟受精及びその後の胚の発生率に及ぼす影響について検討した. 基本培地 (TCM199+発情牛血清+LH+FSH) に卵胞液を30%添加した区の成熟率及び分割率 (使用卵胞卵子の内, 2細胞期以降へ発達した胚の割合) は, 無添加区 (対照区) より有意に高く, 卵胞液60%添加区の受精率及び分割率も対照区に比較して有意に高い値を示した. また, 卵胞液の高分子画分30%添加区, 低分子画分 (10KD未満) 30%添加区及び低分子画分60%添加区では受精率, 成熟率及び分割率において有意な増加は認められなかった. また, 高分子画分60%添加区の分割指数 (2細胞期胚の内, それ以降へ発達した胚の割合) は卵胞液60%添加区より有意に低かった. 以上の結果から, 2-5mmの牛卵胞から採取した卵胞液の成熟培地への添加は, 卵胞卵子の成熟, 受精及びその後の胚の発生に有効であるが, その効果は分画により低下することが示唆された.
  • 前田 淳一, 小林 修一, 笹木 教隆, 新谷 圭男, 酒井 暹, 北村 徹
    1994 年 11 巻 2 号 p. 196-202
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    ウシ体外成熟卵子の受精に, ヒト精子調整溶媒として市販されているGPMを用い, 卵割, 胚発生に対する影響を検討した. 5mMカフェインと10μg/mlヘパリンを添加したGPMまたは修正BO液を用いた場合, 媒精60時間後の卵割率および媒精10日後までに発生した胚盤胞の割合には, 両者に差はなかった. また, 同様にGPMを用いて黒毛和種の個体毎についても検討したところ, 1頭当たり平均7.0個の胚盤胞が得られた. 胚盤胞を凍結融解後移植を行い, 正常な子牛が得られた. これらのことから, GPMはウシ体外受精の受精用培地に使用できると考えられた.
  • Ferdinand P. DAEN, 佐藤 英明, 内藤 邦彦, 豊田 裕
    1994 年 11 巻 2 号 p. 203-209
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    卵丘膨化の程度を表現する方法として, 画像解析装置による方法と, 卵子卵丘複合体の長径と短径を計測し, 公式 (長径×短径×π÷4) により算出する方法がある. 私達は, ブタ卵胞液に卵丘膨化促進作用のあることを認めているが, 卵丘膨化促進因子を分離するにあたって卵丘膨化の程度を正確に, さらに簡便に計測するためにどちらの方法が適しているかを明らかにしておく必要がある. 私達は培養24時間後に卵子卵丘複合体集団を写真にとり, 写真版を用いて画像解析装置と公式により卵子卵丘複合体の占める面積を計測し, それぞれの方法の利点と欠点を評価した. どちらの方法を使っても, 部分的に精製したブタ卵胞液の活性分画は他の分画よりも強い活性を示したことから, 計測方法によって最大活性を示す分画が異なることはないと考えられた. 画像解析装置では, 複雑な形を示す卵丘の占める面積を敏速に計測できたが, 膨化の程度の著しいものについては計測がむずかしかった. また, 遊離した卵丘細胞を除外して卵子卵丘複合体だけを計測することもむずかしく, 写真版を用いて画像解析装置にかける場合には鮮明に撮影・現像されたものしか使えないことがわかった. 公式により算出する方法は, 膨化の程度の著しいものも簡便に計測でき, また, 写真の質に影響されずに測定できるなど画像解析装置よりも優れた点があった.
  • 康 承律, 辻井 弘忠, 保科 和夫
    1994 年 11 巻 2 号 p. 210-215
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    体外でのブタ卵母細胞の成熟と, 体外受精後の精子侵入, 多精子侵入及び雄性前核形成に及ぼす卵胞細胞と卵胞液の影響を検討する目的で, 実験を行った. 成熟培養の基本培地はTCM-199を用いた. 実験には4区を設け,(1) 対照区では基本培地のみで培養を行った. 他の区では同液に,(2) 卵胞細胞,(3) 卵胞液,(4) 卵胞細胞+卵胞液をそれぞれ加え, これらの条件で卵母細胞を47時間培養した. 成熟培養後, 半数の卵母細胞は固定し, 残りは媒精に用いて受精状況を調べた. 卵母細胞の第II減数分裂中期へ発育した割合及び媒精後の精子侵入率において実験区間有意差はなかった。多精子侵入率は, 他の区に比べて卵胞液を添加した区で低くなった. 雄性前核形成率においては, 卵胞細胞+卵胞液の添加区で有意に高い値を示した. これらの結果から, 成熟培養時に卵胞液を加えることによって多精子侵入が減り, 卵胞細胞と卵胞液を共に加え, 雄性前核形成率が高くなることから, これら物質には相乗作用があると考えられた.
  • 淵本 大一郎, 青木 不学, 河本 馨
    1994 年 11 巻 2 号 p. 216-224
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    着床前の胚における細胞周期の制御について調べるため, 初期胚におけるサイクリン類の発現を調べた。はじめに, マウスの卵子からサイクリンAのcDNAの一部を分離し, その塩基配列を決定した. マウスのサイクリンAは, ヒトのサイクリンAと極めて相同性が高かった (アミノ酸で98.9%). サイクリンAとサイクリンB, Dのアミノ酸配列を比較すると, AとBに共通する配列およびAとDに共通する配列がそれぞれ認められた. サイクリンAとBはCDC2蛋白質に, サイクリンAとDはCDK2蛋白質に結合することが知られていることを考えると, 前途の配列は, それぞれCDC2とCDK2に結合するために必要な配列であることが考えられる. 次にRT-PCR法を用いて, 未受精卵, 2細胞期胚, 4細胞期胚, 桑実胚, 胚盤胞それぞれにおけるサイクリン類のmRNAの発現を調べた. サイクリンAのmRNAは未受精卵で発現しており, その後, 胚盤胞になるまで, 徐々に減少した. サイクリンB1のmRNAは2細胞期で減少した以外は, ほぼ同じ量が発現していた. サイクリンB2のmRNAは, 2細胞期に減少しており, その後, 桑実胚期から胚盤胞期まで増加した. 2細胞期でのG2期が長いことの原因は, M期への移行を制御するサイクリンB類の発現がこの時期に減っていることによるのかもしれない. サイクリンD類は, G1/S期移行の制御に関与していることが知られている. サイクリンD1のmRNAは, 2細胞期と胚盤胞期でしか発現が確認できなかった. サイクリンD2のmRNAは, 着床前のどの時期においても発現が確認できなかった. サイクリンD3のmRNAの発現は, 未受精卵で認められ, その後, 2細胞から4細胞期にかけて急激に減少し, 桑実胚から胚盤胞期にかけて再び増加した. サイクリンD類のいずれについても恒常的な発現が認められなかったことから, 初期発生のG1期は, 通常の分裂細胞で見られるようなサイクリンDを必要とするようなものではなく, それとは異なった機構で制御されている可能性がある。
  • 辻井 弘忠, 上田 大, 康 承律
    1994 年 11 巻 2 号 p. 225-232
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    This study was conducted to determine the effect of PMSG and/or hCG (each 15 IU/ml) added to TCM -199 supplemented with 10% FCS and 3mg/m1BSA on the maturation, fertilization and the incorporation of 3H - methionine of pigoocytes. The follicular oocytes were cultured for 48hr with or without supplementationof PMSG, hCG, given each alone or in combination to maturation medium. Theaddition of PMSG with or without hCG to maturation medium was effective ininducting meiotic resumption in pig oocytes. Fertilization rate was significantlyimproved by addition of hCG alone or with PMSG, compared to the control. Fromthese results, it is suggested that the sperm penetration rate of oocyte was increasedby hCG added to the maturation medium. The proportion of polyspermic oocytes, however, was not different among the treatments. Incorporation of methionine intooocytes measured after maturation culture was increased by addition of PMSGand/or hCG as compared to the control. These results indicate that PMSG and/orhCG added to medium during maturation is related to the development of cytoplasmof pig oocytes.
  • 下平 乙夫, 後藤 裕司, 今井 敬, 富沢 宗高, 奥地 弘明, 堂地 修
    1994 年 11 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    体外受精由来胚をethylene glycolを耐凍剤として凍結保存し, 融解後体外で耐凍剤を除去する際の環境温度及び融解後の経過時間が生存性に与える影響について検討した. その結果, 融解5分後に胚をCS-PBSに直接浸漬して耐凍剤除去を行う場合, 室温下で行ったA区 (39.2%: 20/51) よりもCS-PBSを加温して行ったB区 (53.5%: 23/43) の生存率が高かった (P<0.10). しかし, 融解40分後に加温CS-PBSに胚を浸漬して耐凍剤を除去したC区 (24.4%: 10/41) の生存率は, B区よりも有意に低かった (P<0.05). 以上のことから, ethylene glycolを耐凍剤として凍結された体外受精胚をCS-PBSに直接浸漬して耐凍剤を除去する場合, その環境温度に留意する必要があるとともに, 融解後耐凍剤除去あるいは移植までの経過時間が長くなることで生存性が損なわれる可能性が示唆された.
  • 長谷川 昭子, 井上 みゆき, 竹村 正, 香山 浩二
    1994 年 11 巻 2 号 p. 239-246
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    哺乳動物の卵細胞を取り囲む透明帯の生合成部位と時期について, 免疫蛍光抗体法と免疫電顕法を用いて調べた. ブタ透明帯の一成分であるZPlのCys-Thr-Tyr-Val-Leu-Asp-Pro-Glu-Asn-Leuを認識することが判明しているモノクローナル抗体 (MAb-5H4) を一次抗体として用い, ブタ卵巣組織の透明帯抗原を検出した. 免疫電顕により, 透明帯蛋白は一次卵胞の卵母細胞周囲にすでに不連続に形成されていることが観察された. 一方, 蛍光染色法では卵胞の成熟過程に伴って, 卵母細胞の周囲に観察される透明帯の厚みと蛍光強度が増加した. この蛍光は卵母細胞の周辺のみならず, 1-4層の顆粒膜細胞を伴う未熟な卵胞の卵母細胞の細胞質内にも認められた. このことから, 透明帯蛋白は成熟過程にある卵母細胞の細胞質内で合成されることが示唆された. さらに, 電顕観察では透明帯抗原を含む分泌小胞が卵母細胞の細胞質内に観察された. 以上の結果より, 透明帯蛋白は卵胞成熟の初期から後期にかけて卵母細胞で合成され, 細胞質内の分泌小胞によって運搬されるものと考えられた.
  • 栃木 明人, 吉永 陽樹, 長岡 美樹, 橋本 芳美, 早川 智, 栃木 武一, 津端 捷夫, 佐藤 和雄
    1994 年 11 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    PGの初期胚発生におよぼす影響についてマウス4細胞期胚を用い, in vitroで検討した. マウス胚はPMS-hCG処置後の卵管より採取した. IND, PG (E2, F2α, I2)(0-200μM) およびSp-cAMPS (0.3-2.5mM) 添加のmBWWを用い5%CO2 in air, 37℃で培養し, その後の胚発生を観察した. 無添加では胚盤胞の形成は77-87%であったが, PGE, 5μM添加では57.1%, 10μMで25%に低下した. IND100μM添加では52.3%, PGF2α50μMで25%低下したが, PGI2は200μM添加でも胚盤胞の形成率は無添加と同様であった. Sp-cAMPS (0.3mM) 添加で胚盤胞の形成は抑制されたが, Sp-cAMPS暴露後の胚を無添加で培養すると66, 7%に胚盤胞の形成の回復が認められた. これらより, PGがマウス初期胚発生を抑制することが明らかとなった. Sp-cAMPSも同様の効果を認めたが, PGによるものとは異なることが推察された.
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