2026 年 22 巻 2 号 p. 19-26
本稿は、福島県国見町における企業版ふるさと納税制度を活用した救急車導入事業を事例に、官民連携における倫理的課題と制度設計の脆弱性を明らかにするものである。寄付企業が匿名性を盾に事業スキーム構築に間接的に関与し、結果的に寄付金が自社グループに還流する構造は、制度の公共性を損なうものであり、行政と企業の関係性における信頼の崩壊を示している。この構造について、エージェンシー理論とスチュワードシップ理論の観点から分析し、企業が公共的役割を果たすスチュワードとして振る舞うためには、有徳性が不可欠であると論じる。さらに、市民協働のオープン・ガバナンスの視点から、制度の持続可能性と公共性担保のための条件を提示し、官民連携における倫理的基盤の再構築を提言する 1)。