抄録
巨大都市圏の形成により、様々な環境問題を引き起こしている東京圏において、低温・低栄養塩濃度の深層水を夏場に取水し、利用してヒートアイランド現象対策、水質改善策に用いることの可能性について検討した。深層海水を取水できる可能性があるのは東京湾口部であり、大量の水を送水するための大口径・長大トンネルが必要となる。内径6m、延長70km程度のパイプラインのケースで、都心部発生熱量の最大8%程度、湾奥部の水質改善で2割程度の効果が試算された。ある程度の効果は期待できるが、トンネル設置のコスト、可能性が一番大きな要素であり、また効果が広い範囲にわたる公共的な事業効果に対して負担をどうしていくかなどさまざまな課題がある。