1982年にチリで始まった電力セクターの自由化・民営化は1990年代以降、アジア各国においてひろがり、電力事業の自由化、民営化が進められてきている。国によって程度の差はあるものの発・送・配電の分離、競争原理の導入、効率的な電力事業の運営により、電力料金の引き下げ、民間投資による電力投資拡大を意図している。この中でアジア電力セクターは、「政府の保証をアンカーとしたセクターの発展」から「各ステイクホルダーが応分のリスクを公平に負担しながらの発展」にその枠組をかえつつある。これまでアジアの電力事業は、各国の電力公社による買い取りが保証されており、その上政府の連帯保証も付いており、電力IPP事業にとっては投資リスクの軽減されたマーケットになっていた。しかしながら、今後は財政問題から政府の連帯保証がなくなる方向にある。この点で中南米の経験を学ぶことは有益である。中南米においてはすでに電力セクターは民営化され、電力事業も民間事業者自らのリスクにより運営されている。 欧米・中南米等の電力セクター改革先行国からの教訓は国の役割は為替レートを含むマクロ経済を安定化し、民間事業者による競争を促進するための諸制度づくり(最終消費者への適正な価格転嫁、電力料金の漸進的な値上げ、市場運営ルール、グリッドコード他の規制的枠組・整備、監視機関の設置、発送電投資促進のためのインセンティブづくり等)を行うことであろう。
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