MACRO REVIEW
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月はたんなる石ころにすぎない
石川 洋二
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1989 年 2 巻 1 号 p. 53-56

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抄録

宇宙生物学の立場から見て月がいかに魅力に欠けるか,を以下に論考する。宇宙の進化は,均一な系(ビッグ・バン)から多様な系への変化と考えられるが,その過程において,外部からのエネルギーによって常に活性化される閉鎖系が誕生してきた。その系内のダイナミズムは自己組織化を促し,したがって生体内で起こっているものと類似であるとみなすことができる。星間雲,木星,土星の衛星タイタンでの化学進化は,そのような生きた系の例である。また,これらの系では,生命を構成する原初物質の生成が見られるのも興味深い。ひるがえって,月には,外部エネルギーによる活性化,あるいはパターン形成が見られず,また,生命の痕跡もまったく見られない。加えて,月には,大気,水,粘土鉱物がないことから,地球上の生命にとっては,移住,あるいは生存しにくい環境にある。以上の観点から,月は,生命とは相容れない無機的な岩石とみなすことができる。

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