数値モデルによるシミュレーションは,温室効果気体の増加が地球の気候を著しく変化させる可能性を示している。シミュレーションの設定条件を改善して自然条件に近づけるために,観測事実と対比してシミュレーションの結果を検討する必要がある。このような目的をもつ気候診断について,その問題点と方法を論じた。そして,結果の信頼度を指示して地球規模の気候変動の実態を示した。二酸化炭素の増加の著しい1960年代以後の有意な温暖化は,南半球平均気温でのみ認められ北半球平均では見られない。この南北非対称性は,二酸化炭素の増加にともなう気候の数値シミュレーションの結果と一致しないので,エアロゾルの影響などを考慮する必要を指摘した。また,気候要素の多年の平均値が唐突に変わる気候ジャンプについても言及した。