2022 年 100 巻 2 号 p. 415-435
大気海洋相互作用の本質が、熱帯季節内振動変動特性の理解及びモデルでの再現性に強く影響する可能性があることが、過去の研究から示唆されている。本研究では、最新の再解析データであるERA5、ERA-interim(ERAi)、JRA55の海表面データの評価を行い、季節内振動に関連した大気海洋相互作用を調べる上でどの再解析データがより適しているのかを特定し、海洋応答の計算に関連する変数の季節内周期の誤差を定量化する。JRA55の外向き長波放射の振幅は大幅に過小評価(概ね40-60%、地域や季節による)されているが、空間構造、伝播特性の観点では、3つの再解析データは全て季節内振動の対流特性をよく捉えていた。2つのERA再解析データのうち、ERAiは(北半球夏季の)季節内振動に関連した降水と10m風の振幅を大きく過小評価する一方、(北半球冬季の) 季節内振動に関連した潜熱フラックスを過大評価しているため、ERA5がより良い海洋への大気強制データとなる可能性があることが示唆された。JRA55は、降水以外の変数でERA5と同程度の振幅誤差が認められたが、2つのERA再解析よりも大きな位相誤差を示した。