2022 年 100 巻 2 号 p. 437-444
1998年から2020年までの冬季(1月~3月)に与那国島(24.47°N、123.01°E)で観測された大気中CO2およびCH4の総観規模の変動を解析した。24時間の時間窓内のデータを用いた相関プロットの傾きに基づく月平均変動比(ΔCO2/ΔCH4)は、主に中国の化石燃料起源CO2の放出量の前例のない増加を反映し、明瞭な増加トレンドを見せた。同様のΔCO2/ΔCH4比の増加傾向は与那国島の東方約100kmに位置する波照間島(24.06°N、123.81°E)における観測で既に報告されていた。しかし、与那国島における絶対値は波照間島に比べて34%大きかった。さらに、波照間島における2020年2月の月平均値は中国におけるCOVID-19に対するロックダウンに起因する化石燃料起源CO2排出量の減少を反映した急激な減少を見せたが、与那国島の月平均値にはそうした著しい減少は見られなかった。日変動を精査したところ、与那国島では波照間島よりもローカルな影響が、特に日中に大きくなることが分かった。こうしたローカルな影響は、夜間のデータ(20-6 LST)およびより長い時間窓(84時間)を使うことで低減させることができ、その結果得られた月平均ΔCO2/ΔCH4比は2020年2月の急激な減少を含め波照間島で観測された変化とかなりの一致を見せた。これらの結果は、ΔCO2/ΔCH4比が風上の地域における相対的な放出強度の解析に使用できることを確信させるものであった。