2022 年 100 巻 2 号 p. 445-469
プリミティブ方程式系を数値計算するための離散化について、水平方向だけでなく鉛直方向にもスペクトル法を用いる3次元スペクトルモデルの定式化を提案する。この定式化において、鉛直方向の離散化にはルジャンドル多項式展開を用いている。この定式化のもとでは、セミインプリシット数値積分が効率的に行えることが示される。この定式化に基づいて数値モデルを開発し、先行研究で提案されているいくつかのベンチマーク数値計算を行う。その結果、プリミティブ方程式系のこの実装により、比較的少ない鉛直方向の自由度でも高精度の数値解が得られることが示される。また、いくつかの異なる鉛直自由度の計算を行うことにより、鉛直方向の自由度を増やすと数値解の誤差が急速に減少するというスペクトル法特有の性質が見られることも示される。さらに、この定式化のもとで、反射波を抑制するためのスポンジ層に代わる工夫が示されるとともに、この定式化の応用として、鉛直自由度を極限まで減らした「トイ」モデルも導かれる。