2023 年 101 巻 3 号 p. 209-227
本研究では気象庁が運用する力学的季節予報(Dyn-SCF)システムであるJMA/MRI-CPS2の月降水量予報を、気候指標を用いた統計的季節予報(St-SCF)システムの予報と比較することにより、系統的かつグローバルに評価することを目的とした。このためにまず17の気候指標を用いた新しいグローバルなSt-SCFシステムを開発し、このシステムの月降水量予報をJMA/MRI-CPS2のものと比較した。その結果、0ヶ月予報では、JMA/MRI-CPS2の方がSt-SCFよりもグローバルに高い精度を持つことがわかった。一方、1ヶ月以上の予報では、決定論的予報スキルについてはJMA/MRI-CPS2とSt-SCFは同等であり、確率論的予報スキルについてはJMA/MRI-CPS2ほうがやや高かった。またSt-SCFと比較して、JMA/MRI-CPS2の予報精度が低い地域や季節があることが示された。これは、JMA/MRI-CPS2が特定のダイナミクスを適切に再現できていないことを示している。このようにDyn-SCFとSt-SCFを比較することで、Dyn-SCFの予報精度を向上させる可能性のある地域や季節を明らかにすることができると考えられる。