抄録
スマトラ南西部沿岸域における日周期降水に対する混合ロスビー重力波(MRGW)の影響について、海大陸研究強化年(YMC)パイロット集中観測期間中の例を解析した。使用データは、2015年11月24日から12月13日にかけて研究船「みらい」により南緯4.1度、東経101.9度で観測された海上気象、ラジオゾンデ、Cバンド偏波レーダーのデータと全球客観解析データである。日降水量と風の場は対応しつつ数日の周期で変動していた。風の場の変動は観測サイトを通過したMRGWに対応しており、MRGWに伴う陸風偏差(海風偏差)が観測サイトの上空で支配的な時、陸上と海上における日周期降水活動と降水量が大幅に強化 (抑制)されていた。また、MRGWに伴う陸風偏差の卓越期間中には、大規模な下層収束・上層発散、より強い海風及び冷たい陸風が観測された。一方、MRGWに関連した風況にかかわらず、降水の日周期は類似した位相と伝播パターンを持ち、規則的に発達・衰退する海陸風循環を伴っていた。解析結果は、海と陸のコントラストによる局地収束が日降水サイクルそのものを引き起こす一方、MRGWが大規模な環境場と局地的な海陸風循環の強度を変動させて日周期対流と降水の振幅に大きな影響を及ぼすことを示唆している。