気象集誌. 第2輯
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移動式多重ネステッド格子系(MNG)による台風予報テストについて
大河内 芳雄
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1978 年 56 巻 6 号 p. 571-583

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抄録

先に提案した多重ネステッド格子系を台風の中心と共に移動させるシステムとし,σ系,3層プリミティブ方程式モデルに適用した(MNGと略称)。最大格子間隔は60°Nで38工kmとし,内側の格子間隔は順次半減させた。内部葎域の交面境界はtwo-way法で結合した。時間積分にはEuler-backward法を適用した。積雲対流効果としてHarrison型の円対称熱関数を組み込んだ。
今回のテストの目的は,提案されたMNGの計算安定性とその適応性を調べることで,実際の台風について計鍔された。初期値は客観解析から得られた一般場にモデル台風のプロフィルを重ねて作成した。モデル台風の3次元樟造は台風半径,中心気圧,地上最大風速などの実測値及び平均的気温偏筒などから推定した。細かい格子上の一般場は最大格子の値から順次内挿して決めた。
テストに用いたのは台風7609号,7617号,7709号及び7711号である。これらの台風の進路は比較的複雑で,ルーチンの力学モデルではあまり良く予測できなかったケースである。計算時間の関係で1例を除き他は総て3段階NNGを用いたが,進路予想はかなり改善された。特に,これまで予測の難かしかった転向点の予想がかなり適確に寿され,予報のおくれの問題もかなり改善されている。4段階MNGは1例だけテストされたが,簡単な初期値•熱屡数を用いたにも拘わらず,台風の3次元構造をかなり良くシミュレートしているようである。

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