気象集誌. 第2輯
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ENSOイベント期間中の西部北太平洋表層水温場
花輪 公雄渡邊 朝生岩坂 直人須賀 利雄鳥羽 良明
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1988 年 66 巻 3 号 p. 445-456

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抄録

ENSOイベント期間中の西部北太平洋における表層水温場の状態を明らかにするため,海面水温アノマリと,東経137度線および伊豆海嶺上の測線(J線)における黒潮領域の混合層に対する合成図解析を行った。1961年から1985年までの25年間の冬季を,ENSO-1年,ENSO年,ENSO+1年,他の年の四つのカテゴリに分類した。たとえば,1982/83年ENSOイベントでは,1983年1~3月がENSO年冬季とみなされる。解析の結果,ENSO年冬季の海面水温場には,アジア大陸から東経170度付近までの北緯30度線に沿った幅広い領域で,顕著な正のアノマリが出現することがわかった。一方,ENSO+1年冬季の海面水温場は,符号が逆のENSO年冬季の分布と極めてよく一致しているアノマリ分布を示していた。また,ENSO年冬季の日本南方の黒潮領域は,他のカテゴリの冬季に比べ温かく薄い混合層であった。この差異を生じさせる原因のひとつとして,東アジアの冬季季節風の吹き出しの強さを挙げることができた。すなわち,ENSO年冬季の季節風の吹き出しは,他のカテゴリの冬季に比べて相対的に弱い状態となっていた。

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© 社団法人 日本気象学会
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