気象集誌. 第2輯
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熱帯太平洋の海水温変動を考慮した場合としない場合の大気大循環モデルにおける冬期平均降水量と上部対流圏循環の経年変動
In-Sik Kang
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1988 年 66 巻 5 号 p. 741-751

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抄録

冬期の平均降水量と上部対流圏の定常渦の経年変動およびそれらの変動に対する熱帯の海面水温(SST)の影響を調べた。用いた資料は,15年間の熱帯太平洋の SST の観測値を入れた場合(SST run)と,いれない場合(control run)についての大気大循環モデル(GCM)の15年積分からの時系列資料である。
SST runにおける変動と control run における変動を比較することにより,熱帯太平洋でのSST変動は,局地的な熱帯域,特に中部太平洋とインジネシア地域での降水量変動と,両半球の亜熱帯域中部太平洋上の上部対流圏の定常渦の変動の大きな部分を説明することが示された。しかしながら,中経度における変動の大きさは SST の影響を受けていない。
赤道太平洋の中部(cp)と西部(wp)の降水量変動に見られる東西のシーソー現象と,それによって励起されたウォーカー循環の偏差は,主に cp の SST 変動に依っている。SST run における cp 及びwp 上の降水量偏差は共に,太平洋•北米(PNA)地域の循環場の偏差を引き起すが,より強い大気の応答は,cp での降水量偏差により起っている。熱帯の中では,熱帯内の降水量と PNA セクターでの中緯度循環の大規模な変動に最も強い影響を与えるのは中部太平洋である。しかしながら,control run では cp 及び wp の降水量偏差は,中緯度における組織だった大循環パターンを作り出していない。

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© 社団法人 日本気象学会
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