気象集誌. 第2輯
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西部熱帯太平洋域の対流活動の夏期東アジア循環場への影響
露木 義栗原 弘一
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1989 年 67 巻 2 号 p. 231-247

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抄録

季節内変動の時間スケールにおける、夏期北半球循環場と熱帯の対流活動との関係について統計的研究を行った。その際、東アジア付近における梅雨期と盛夏期との違いに重点を置き、5月26日~7月14日と7月15日~9月2日の各50日間に分けて解析した。解析結果を解釈するために、月平均300mb 流線関数の平年値の順圧不安定も調べた。
相関解析によると、梅雨期には熱帯の対流活動と東アジア循環場との問にはあまり強い関係はみられず、対流活動が中緯度循環場を強制しているという明確な証拠は得られなかった。一方、盛夏期にはフィリピン付近とインドシナ半島の対流活動は東アジアの循環場に大きな影響を与え、特に黄海付近の高度がその影響を最も強く受けることがわかった。西部熱帯太平洋域の対流活動が活発になると、北太平洋上にそこから発する東西波数6程度の波列が現れ、その位置は対流活動の位置にあまり依らない。
8月の300mb循環場の主要な順圧不安定モードのうちのひとつは、盛夏期に北太平洋上にみられる波列に似ている。それは定在波的に振舞い、黄海付近でも大きな振幅を持つ。そのモードの振幅がe倍になるのに要する時間は、粘性を無視した場合11日である。一方、6月の順圧不安定モードは東アジア付近で大きな振幅を持たない。これらの結果は上に述べた解析結果と矛盾せず、盛夏期の東アジア域における熱帯と中緯度の相互作用において、順圧不安定が重要な役割を果たしていることを示唆している。

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