気象集誌. 第2輯
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1979年における中国の梅雨前線付近の下層循環系の季節遷移と北半球夏モンスーン
加藤 内蔵進
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1989 年 67 巻 2 号 p. 249-265

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抄録

中国の梅雨前線付近の下層循環場の特徴の季節遷移と北半球夏モンスーンの役割について、1979年の観測資料を用いて解析した。
梅雨前線は5月には未だ中緯度の傾圧帯内のシステムであり、その北側の下層寒気と発散を伴う地上の高圧帯の存在が特徴である。南側の地上の亜熱帯高気圧は明瞭でない。
6月半ばには、梅雨前線へ向かう強い下層の南風を伴う亜熱帯高気圧が強まる。との急変は、Kato(1985)の指摘した大陸の前線帯付近の下層温度傾度消失とは別の現象であり、北半球夏モンスーンの開始と同時に起きる。との時、OLR でみた強い熱源域が南アジア広域(赤道~25°N/60°E~105°E)に広がり、そとの下層気圧が低下する。とのため亜熱帯高気圧域では120°E付近を中心に東向きの気圧傾度の増加に伴う梅雨前線帯への下層の南風が地衡風的に強化される。同時に、インド方面から西太平洋熱帯海域に伸びるベルト状の熱源域の強化による(~10°N/60°E~140°E)局所的子午面循環の下降域として亜熱帯高気圧も強められる。
6月半ばの大陸付近の梅雨前線の南側の高気圧域の下層風場の急変は、北半球夏モンスーンの開始に伴って形成された熱源分布による上記2つのプロセスの重ね合わせとして理解される。なお、1979年から1983年の半旬平場値に基づく簡単な解析によっても、との推論を支持する結果を得た。

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