1989 年 67 巻 2 号 p. 267-278
1982年5月4日から8日にかけて長崎市において観測された黄砂現象について、太陽直達光と太陽周辺光の分光観測からエアロゾルの光学的厚さと粒径分布(体積スペクトル)を求めた。その結果、半径数ミクロンの大粒子の増大とサブミクロン粒子の減少が見出された。オーリオールメータ観測から得られた黄砂の体積スペクトルのモード半径は2μmより大きかった。平時の波長0.5μmでのエアロゾルの光学的厚さが0.2~0.8、オングストローム指数αが0.8~1.5であったのに対して、黄砂時には、各々0.5~1.0、0.1~0.5と大きく変化した。地上•高層天気図を用いた流跡線解析、およびエアゾルの元素分析、数密度、散乱断面積の観測結果は、黄砂の到来が前線の移動に伴う大陸気団の卓越によることを支持した。