アンダーセンハイボリュームサンプラーを用いて、南半球が夏季にあたる1986年11月15日から1987年3月13日までのあいだ、インド洋と南極海域において砕氷船「しらせ」、および1986年6月3日から8月1日までの北部太平洋での観測船「白鳳丸」の航海中、船上にて大気エアロゾル粒子の捕集を行った。捕集試料中のメタンスルホン酸(MSA)と過剰硫酸塩(nss-SO2-4)の濃度をイオンクロマトグラフ法により定量分析した。MSAの陰イオン成分であるCH3SO-3は、直径1.1μm以下の粒子において検出された。概して、 CH3SO-3濃度は気温の低下に伴って増加し、反対にnss-SO2-4濃度は減少した。風速の強かった南緯40度付近で、CH3SO-3とnss-SO2-4の濃度は最高値を示し、それぞれ0.067μgm-3と0.77μgm-3であった。これらの結果は次のふたつのことを示している。第一は、高緯度において、低温環境下ではMSA生成がSO2生成よりも活発になり、一方H2O2やOHのようなオキシダント濃度の低下がMSAとSO2からのnss-SO2-4生成を鈍化させること。第二は、ジメチルサルファイド(DMS)の大気への移行量が風の強さに依存していることである。