日本における代表的なおろし風「やまじ風」を対象に、非対称な山に対する2次元山越え気流が非静水圧モデルを用いてシミュレートされる。やまじ風の特徴である「やまじ風前線」とその後面での逆向きの風が、内部ハイドロリックジャンプとそれに伴う循環によって説明される。
一様流体に対する数値実験によれば、内部ハイドロリックジャンプの振舞は一般流の大きさや山の形に強く影響される。大きな逆フルード数の場においては山の後面でジャンプが殆ど停滞する準定常なレジームが得られ、その後面に一般場とは逆向きの風が発生する。やまじ風のケースでは四国山地の非対称性と中国山地の存在がジャンプの停滞とその後面での逆風をより生じやすくしている。
1987年4月21日のやまじ風では山頂付近の高度に明瞭な逆転層が存在していた。逆転層がある場合には無い場合と比較して地表風はより大きくなる事が、実況データに基づく大気プロファイルを用いた数値実験により示される。一般流の大きさを時間とともに変化させる実験により、内部ハイドロリックジャンプの発生と移動が定性的にシミュレートされ、やまじ風の概念モデルが示される。