気象集誌. 第2輯
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下向き長波放射の日分布に対する地表面モデルの感度実験
Jean C. MorrillRobert E. DickinsonAndrea N. Hahmann
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1999 年 77 巻 1B 号 p. 265-279

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抄録

全球土壌水分プロジェクト(GSWP;Global Soil Wetness Project)はISLSCP Initiative-1の下向き長波放射の精度に関して問題を提起した。夜間、気温が低下するときに数時間に亘って最大下向き長波放射が一様に起こるというようなデータのずれが現われる。この問題は6時間毎の長波放射データを計算する式に起因しているようだ。地表面モデルの長波放射日変化の感度試験にBATS(Biosphere-Atmosphere Transfer Scheme)を使い、以下の3つの実験を行った。1)値を変えずに実行したコントロール実験、2)全ての長波放射を6時間進めて与えた実験、3)日平均値を与えた実験。それらと広範囲の月平均値、また6地点の月平均日周期値との比較を行った。コントロール実験に対して、長波放射を置き換えた2つの感度実験の両方に昼間に入射する放射の総量の増加が見られ、また、夜間は減少が見られた。その結果として昼間では上向き長波放射が増え、夜間は昼間の増加分を超える減少があり、収支で見れば上向き長波放射の減少となっている。上向き長波放射の変化は顕熱、潜熱、土壌熱フラックスとバランスしていなければならない。長波放射の変化の結果として、感度実験で計算された顕熱フラックスは昼間では増え、夜間は減り、日間の増加は夜間の減少よりも大きく、結果として収支で見ると顕熱の増加となる。顕熱の変化は上向き放射の変化に対して通常は±1W/m2以内で、そして相違を補う潜熱と土壌熱フラックスの変化は小さい。つまり、水収支項、すなわちGSWPの土壌水分指標計算に関わる導出値の変化は概して無視できる程度である。

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