自然災害科学
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石巻市における震災伝承・震災遺構に関する3つの検討会議の事例分析:会議手法に対する有効性の検証と配慮すべき点
佐藤 翔輔今村 文彦
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2018 年 37 巻 S05 号 p. 47-72

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抄録
本稿では,東日本大震災で被災した石巻市において市民参画で行われた,震災伝承の基本計画や震災遺構の整備方針に関する検討会議を対象にして,そこに出された意見の分析を行った。 その結果は次のようにまとめられる。 1 )3 つの検討会議とも,主な論点は,経時的に大きく変化することなく,震災伝承検討会議では基本理念,伝承の内容,中間支援組織,門脇小検討 会議では保存の範囲,特別教室・体育館・校庭の活用,大川小検討会議では慰霊碑・モニュメントの場所,オープンまでのメンテナンスと,全 5 回でほぼ一貫していた。 2 )門脇小検討会議においては,校舎の解体を望む住民が会議を経ることで,保存の意向へと変化していった。 これには,当該の校舎の内部を視察したり,広島等の先行事例を視察したことが大きく影響していた。3 )検討会議全体や策定された計画に対して,会議メンバーの多くは好意的な評価であった。これは,対話の形式を重視し,相互の意見の不一致等を学び合う協調学習のプロセスによっ て,ぞれぞれの計画ができあがったことに,会議メンバーによる一定の納得が得られたものと考える。
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© 2018 日本自然災害学会
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