自然災害科学
Online ISSN : 2434-1037
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37 巻, S05 号
特別号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 神谷 圭祐, 菊本 統, 橋本 涼太, 桑島 流音, 小山 倫史
    2018 年 37 巻 S05 号 p. 1-16
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー
    本論文では,2016年熊本地震による熊本城の石垣の被害を計測・分析し,石垣の変状および崩壊のメカニズムについて議論した。 3次元レーザースキャナで計測した地震後の石垣の3次元形状と,地震発生以前の計測結果や古文書に基づいて求めた伝統的な石垣形状を比較することで,石垣のはらみ出しを明瞭に捉えることができた。一連の検討結果からは,地震等の災害発生後に石垣の安定性を適切に評価し補強・補修対策を施すために,平時からレーザースキャナ等により石垣形状のデジタルデータを取得しておくことが重要であると示唆された。
  • 曽篠 恭裕, 黒田 彰紀, 宮田 昭
    2018 年 37 巻 S05 号 p. 17-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー
    日本において将来発生する大規模災害に備えるうえで,国際医療チームの受入も検討が求められる。しかし,日本では,国際医療チームの受入計画策定に関する研究が乏しい。このため,本研究は,PCM 手法の応用による国際医療チームの受入計画策定を試みた。PCM 手法の活用により,国際赤十字医療チームの受入に向けて求められる準備事項が抽出された。そして,抽出した準備事項とフィリピンでの国際医療チームの受入事例とを比較検証し,抽出した準備事 項の妥当性を検証した。PCM 手法は国際赤十字を含む国際協力団体において標準的に使用され ている手法であることから,国際医療チームの受入計画を策定するうえで,同手法の応用は有効であると考えられる。
  • 安本 真也, 牛山 素行, 関谷 直也
    2018 年 37 巻 S05 号 p. 33-45
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー
    岩手県岩泉町では,平成28年台風10号災害の際,大きな被害が発生した。特に安家地区では,甚大な物的被害が発生したにも関わらず,比較的,人的被害が少なかった可能性が示唆されている。その要因を探ために,住民に対して避難行動についてのアンケート調査を行った。その結果,第 1 に,町からの「避難情報への接触」の段階では IP 端末が特に有効であったことが 明らかになった。IP 端末が避難情報の認知で役立つメディアとして調査等で定量的に示されたことは,過去に例がない。ただし,この IP 端末も万能ではなく,維持には費用負担が大きい,という課題がある。第二に,他者からの呼びかけや直接的なリスク認知としての「河川の状況」が, 避難行動にあたえる影響は大きいことが明らかとなった。最後に,安家地区においては地理的 特性に基づいた避難が行われていた。行政によって指定される避難場所の位置ならびにそこへ のルートの安全性は避難行動に大きな影響を与える。行政は避難場所を設定する際に,逆に避 難行動をとることが危険となることを周知する必要がある。
  • 佐藤 翔輔, 今村 文彦
    2018 年 37 巻 S05 号 p. 47-72
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー
    本稿では,東日本大震災で被災した石巻市において市民参画で行われた,震災伝承の基本計画や震災遺構の整備方針に関する検討会議を対象にして,そこに出された意見の分析を行った。 その結果は次のようにまとめられる。 1 )3 つの検討会議とも,主な論点は,経時的に大きく変化することなく,震災伝承検討会議では基本理念,伝承の内容,中間支援組織,門脇小検討 会議では保存の範囲,特別教室・体育館・校庭の活用,大川小検討会議では慰霊碑・モニュメントの場所,オープンまでのメンテナンスと,全 5 回でほぼ一貫していた。 2 )門脇小検討会議においては,校舎の解体を望む住民が会議を経ることで,保存の意向へと変化していった。 これには,当該の校舎の内部を視察したり,広島等の先行事例を視察したことが大きく影響していた。3 )検討会議全体や策定された計画に対して,会議メンバーの多くは好意的な評価であった。これは,対話の形式を重視し,相互の意見の不一致等を学び合う協調学習のプロセスによっ て,ぞれぞれの計画ができあがったことに,会議メンバーによる一定の納得が得られたものと考える。
  • Md. Shibly SADIK, Hajime NAKAGAWA, Md. Rezaur RAHMAN, Rajib SHAW, ...
    2018 年 37 巻 S05 号 p. 73-91
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー
    2009年にバングラデシュを直撃したサイクロンアイラは多くの被害をもたらし,人道的組織により,現地の住宅規定に基づいた住宅再建支援が大々的に行われた。本研究はサイクロンアイラの被災地コイラ郡において,NGO や現地被災者による住宅復興方法の特性を明らかにし,その結果を被災者の認識と専門家の意見に基づいて評価した。具体的には被災者とのグループ ディスカッション(Focus group discussion),専門家への聞き取りと,制度の調査を行った。その結果,NGOと被災者は高潮による洪水に配慮せず,暴風と通常の潮汐による洪水のみを考慮した安全対策をとっていたことが明らかとなった。また住宅再建にかける時間は短く,災害前の脆弱性を低度から中度ほど軽減する程度であった。被災者の認識に基づいて作成された住宅復興カーブは,災害前の脆弱性を引き継いでいることを示していた。これらのことより,本研究は現在の住宅復興のあり方に一石を投じ,土地利用を基にした住宅復興方法を提案する
  • Saroj KARKI, Hajime NAKAGAWA , Kenji KAWAIKE , Masakazu HASHIMOTO
    2018 年 37 巻 S05 号 p. 93-105
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー
    河岸侵食は河川管理のために重要な課題の一つであり,特に沖積蛇行河川ではその地形動力学的な特徴から,重要度が高い。そのため,侵食の最小化や流路の安定化のために,様々な対策が取られている。本研究では斜形不透過型水制の河岸侵食に対する低減効果を分析した。水路実験は,蛇行度の異なる 2 種類の侵食可能蛇行流路を用いて行った。本研究の目的は,提案する対策の様々な蛇行度における性能を評価することと,流路全体の形態学的な流路の発達を分析することである。結果より,低蛇行度の方が,高蛇行度よりも侵食し易い傾向があることを示した。また,蛇行度は流路全体の形態学的な流路の発達に影響しており,低蛇行度の場合で独特な点状砂州,瀬ー淵シーケンスの形成が見られた。提案された対策は低蛇行度の場合で良好な性能を示しており,河岸近傍の流速の低減効果が確認されたが,水はね効果もまた低減されることがわかった。
  • 中谷 加奈, 林 聖也, 長谷川 祐治, 小杉 賢一朗, 里深 好文
    2018 年 37 巻 S05 号 p. 107-117
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー
    日本の扇状地の土地利用には住宅地と農地がある。住宅地の既往検討から,土石流の到達範囲には建物や道路が影響し,それらを表現できる詳細な地形データが解析で有効と示されてきた。しかし,農地を対象とした検討は殆ど無く,土石流解析のための適切な地形データや解像 度の検討も行われていない。本研究では Hyper KANAKO システムを用いて,農地と住宅地を 対象に土石流解析を行い,異なる地形データによる到達範囲や挙動の違いを検討した。結果から農地では,DEM と DSM を用いることによる到達範囲の外縁に大きな差は見られなかったが, 詳細メッシュでは田圃で周囲よりも高い流動深・堆積が見られた。どちらの土地利用も,詳細な1m メッシュを用いた結果で,実災害に対応するような土石流の到達範囲や挙動が確認された。
  • 内山 庄一郎, 鈴木 比奈子, 上石 勲, 中村 一樹
    2018 年 37 巻 S05 号 p. 119-135
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/03/20
    ジャーナル フリー
    2017年 3 月27日,栃木県那須町において雪崩が発生し,8 名の人的被害が生じた。現地調査により雪崩の堆積区が推定されたが,走路及び発生区は明らかではない。これらを明らかにするため,災害の 6 日後に UAV と SfM-MVS 写真測量による調査を実施した。これにより,オルソモザイク画像と積雪 DSM,さらに積雪 DSM と災害前の DTM から推定積雪深を得た。この結果から,雪崩が流入した沢の最上流部には,推定積雪深が周囲より小さい領域が認められ, 発生区との関連が示唆された。また,発生区の範囲として,幅が狭く細長い形状が推定された。 さらに,UAV 写真から判読した積雪表面形態のうち,クラック状のテクスチャは,発生区の一 部を示している可能性がある。
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