抄録
京都府北部を流れる由良川では,河道からの洪水氾濫対策として本川堤防の整備が進められてきたが,かえってそれが内水氾濫の発生を助長してしまっている。支川とその流下先の本川との合流部には樋門が設置されており,本川水位が上昇した際にはこの樋門の操作が極めて重要になる。本研究では,上流山地部で1次元モデルを考慮し,さらに下流低平地部では2次元氾濫モデルを適用した解析を行った。また,下流端境界においては,樋門操作とともに支川と本川の水位による相互作用を考慮した。このモデルを用いることで,平成30年7月豪雨において福知山市大江町で発生した内水氾濫をより現実に即してシミュレーションすることができた。解析結果は,やや過小評価になったものの,実測データとよく一致した。さらに本研究では,樋門操作を(適切なタイミングで)行わないリスクについても検討した。解析によると,適切なタイミングで樋門を閉鎖した場合に比較して,樋門を閉鎖しなかった場合には浸水深が40cm大きくなる結果となった。本モデルは,ポンプ設置などの将来的な浸水軽減対策の効果を評価 するのに用いることも可能であると考えられる。