自然災害科学
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38 巻, S06 号
特別号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • Aiko FURUKAWA, Hiroki YOSHIKAWA, Junji KIYONO
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 1-23
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    2016年熊本地震により,熊本県山都町に位置する重要文化財「通潤橋」には,壁石のはらみ出し,盛土の亀裂,通水管からの漏水などの被害が発生した。壁石のはらみ出しは最大15cm程度で,その発生位置はアーチ中央部ではなくアーチ端部と橋端部の間であった。本研究では,まず,微動計測により通潤橋と周辺地盤の振動特性を明らかにした。次に,通潤橋と近傍の強震観測点での地盤の卓越周期が大きく異なることから,通潤橋地点の地震動を推定した。 続いて,微動計測により明らかにした固有振動数に一致するように通潤橋の解析モデルを作成し,地震応答解析を行った。その結果,観測地震動を入力したときはアーチ中央部が破壊したのに対し,推定地震動を入力したときはアーチ端部と橋端部の間で壁石のはらみ出しが大きくなり,実被害を良好に再現することができた。
  • Aiko FURUKAWA, Johanes Jefry PRASETYO, Junji KIYONO
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 25-41
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    組積造壁の面内水平載荷試験により,インターロッキングブロックを用いた組積造の補強効果について検証を行った。一般的な直方体のブロックと,I型の形状をしたインターロッキングブロック,波型の形状をしたインターロッキングブロックの3種類のブロックから構成される3種類の組積造壁を試験対象とした。 2階建,4階建,6階建の組積造建物の1階の壁が支える上載荷重を想定し,3通りの鉛直応力に対して試験を行った。試験の結果,上載荷重が小さい場合にインターロッキング組積造壁は直方ブロック組積造壁よりも強度が高いことが明らかとなった。上載荷重が増えるにつれて,摩擦力が増加し,直方ブロック組積造壁の強度が相対的に上昇するため,インターロッキング組積造壁の効果が減少することがわかった。
  • 松田 朋也, 渡邊 康玄
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 43-55
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    2016年8月,石狩川上流で洪水が発生した。この洪水において,石狩川上流に位置する上川町の高原大橋は,橋台背面盛土の浸食や,橋脚の沈下など甚大な被害を受けた。本研究では,平面二次元河床変動計算ソフトiRIC Nays2DHを用いて,洪水における河道変化の過程の数値計算を行うこととした。その結果,被災要因が,流れの集中と,河道の平面形状に伴う河床変動によるものであることが明らかになった。また,出水時の流れの集中の解消を図るための河道平面形状を修正することを目的とした橋長の伸長が,極めて有効な対策であることが確認された。
  • 内山 庄一郎, 須貝 俊彦
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 57-79
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    2014(平成26)年8月20日に広島県広島市で発生した土石流災害について,無人航空機(UAV)撮影とSfM写真測量により土砂堆積量を計測し,地質による被害特性の差異を明らかにした。 人的被害は,谷出口から平均132mの範囲で発生し,これは建物被害域よりも小さかった。建物被害域は,ホルンフェルス地域よりも花崗岩地域のほうが範囲が大きかった。また,ホルンフェルス地域では,建物が土石流を停止させる働きを示したが,花崗岩地域では,細粒な土砂が建物の間を通って,より遠方まで到達した。これらの結果は,このイベントにおける土石流の到達範囲が,沖積錐の地形発達範囲と同等か,それよりも小さいことを示している。
  • 伊藤 駿
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 81-96
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    本研究は,東日本大震災が人々に与えた影響のうち,特に人々の「仕事」に対する影響に着目し,その実態と特徴を明らかにした。また,その影響が震災後,人々の意識変化に対する影響も検討した。公開データの二次分析を通して,1震災による仕事への影響は,業種や地域によって異なるのか,2自身への影響が発生したのは個人の属性や立場によって異なるのか,3そうした影響は,人々のその後の意識変化に影響を与えたのか,という3点を明らかにした。分析の 結果,1業種や地域による差異,2自身の属性や立場による差異,3その後の意識変化への影響が確認され,震災による仕事への影響の多層性が指摘された。最後に知見をまとめるとともに,震災の影響の受けやすさは業種といった集団の属性,性別や立場といった個人の属性などによって規定されており,それらに配慮した復興施策が必要であることを述べた。
  • Herman MUSUMARI, Hajime NAKAGAWA, Kenji KAWAIKE, Rocky TALCHABHADE ...
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 97-108
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    京都府北部を流れる由良川では,河道からの洪水氾濫対策として本川堤防の整備が進められてきたが,かえってそれが内水氾濫の発生を助長してしまっている。支川とその流下先の本川との合流部には樋門が設置されており,本川水位が上昇した際にはこの樋門の操作が極めて重要になる。本研究では,上流山地部で1次元モデルを考慮し,さらに下流低平地部では2次元氾濫モデルを適用した解析を行った。また,下流端境界においては,樋門操作とともに支川と本川の水位による相互作用を考慮した。このモデルを用いることで,平成30年7月豪雨において福知山市大江町で発生した内水氾濫をより現実に即してシミュレーションすることができた。解析結果は,やや過小評価になったものの,実測データとよく一致した。さらに本研究では,樋門操作を(適切なタイミングで)行わないリスクについても検討した。解析によると,適切なタイミングで樋門を閉鎖した場合に比較して,樋門を閉鎖しなかった場合には浸水深が40cm大きくなる結果となった。本モデルは,ポンプ設置などの将来的な浸水軽減対策の効果を評価 するのに用いることも可能であると考えられる。
  • 安本 真也, 田中 淳, 関谷 直也
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 109-122
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    漁港の管理者である自治体は,漁港漁場整備法において,漁港の維持や保全などの責めを負うこととなっている。そのため,漁港の津波対策も「漁港の維持や保全」という観点から必要である。実際,過去に津波が発生したときには、漁港は必ず被害をうけている。そのため,水産庁は漁港やその背後にある漁村,さらには周辺海域まで含めた漁業地域を対象とした,災害に強い漁業地域づくりガイドラインを策定している。このような,水産業とその関連事業者や住民を守るための津波対策の方策をつくるということは重要である。だが,現実には漁港などの津波対策は進んでいるとは言い難い。そこで,こうした漁業地域における津波対策の現状を把握するために,アンケート調査を実施した。この調査結果を,太平洋側と日本海側の比較を通して分析した。その結果,第一に,漁業地域における津波対策の明文化については,ほとんどの自治体で行われていないことが明らかとなった。第二に,具体的な漁業地域における津波対策としては,太平洋側が「検討している」割合が高く,比較して,日本海側が低い結果であった。また,避難に関しては比較的対策が進められつつあるが,それ以外の漂流物や津波火災などにはまだ検討が進んでいなかった。第三に漁業地域における津波対策の課題として,漁港に特化した津波対策は「必要ない」と考えられているわけではないことが明らかになった。今後は,漁港の津波対策が進まないボトルネックを明らかにする必要がある。
  • 野口 亮輔, 宮島 昌克
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 123-132
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    地震災害時において,医療機関は救命救急活動を実施する重要な拠点施設となるが,医療機関も被害を受ける。救命救急活動を迅速に行うためにも,地震直後の医療機関における被害や医療機能の低下度合いを即座に把握することは重要である。そこで本研究では,2018年北海道胆振東部地震を対象にアンケート調査を行い,医療機関のライフラインの機能被害やライフラインの代替設備の容量などと医療機能低下の関連を分析し,医療機能に影響を及ぼす被害の要因を明らかにした。
  • 髙木 朗義, 杉浦 聡志, 森 啓明, 岩田 秀樹
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 133-151
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    岐阜県と岐阜大学が共同で,2018年7月に岐阜県で被害を受けた,または避難率が高い4都市(関市,下呂市,郡上市,飛騨市)においてアンケート調査を行った。その結果に対して,まず単純集計分析によって居住者の避難行動を分析する。次に,カイ二乗検定またはFisher検定および残差分析を用い,2種類のクロス集計分析により,避難/非避難を分ける要因および避難場所を選択した要因を分析する。最後に,これらの分析結果に基づいて,豪雨災害における住民の避難に関する問題点をまとめ,7つの解決策を提案する。
  • 池田 雄一
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 153-183
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    本論文では,平成28年熊本地震の震度7の揺れに襲われた益城町の目測調査を行った。その調査対象地区の7名が所有していた被害木造住宅の聞き取り調査を行って,7 棟の被害木造住宅の平面図を作成した。この被害木造住宅の平面図を基にして,益城町やその近郊で観測された強震動を用い,地震応答解析を行って,7 棟の被害木造住宅の1階地震変位応答量を定量評価した。 そして,調査対象区域の木造住宅の敷地内配置角度に着目して,熊本地震における木造住宅の被害に関する新しい被害評価指標を抽出して,益城町の木造住宅の被害に関する一つの考察を試みた。
  • Shaofeng YANG, Yoshiki OGAWA, Koji IKEUCHI, Yuki AKIYAMA, Ryosuke ...
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 185-199
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    本稿では,東京都に位置する荒川の流域において大規模水害が発生した場合に,大規模な企業間取引のGISデータを用いて,水害がサプライチェーンに与える経済的影響を定量的に推定した。まず,荒川流域の氾濫シミュレーション解析データを用いて,被害を受けて事業継続ができない被災企業を特定した。次に,大規模取引ネットワークデータを用いて被災企業と取引関係によって繋がっている企業を特定し,その産業構造についてネットワーク分析した。最後に,被災区域及び被災区域外の取引先の影響される取引金額について,被災企業の浸水期間(被災期間)や,被災企業の取引先の次数が増加するにつれ影響が小さくなることを考慮し,推計を行った。分析の結果,被災地の企業の取引先は全体の20~30%であり,5次取引先までを含めると全体の約50%であり,被災地以外でも多くの企業が影響を受ける可能性があることがわかった。地域別では,東京や大阪などの大都市の受ける影響が大きく,産業別では,金融,運輸業への影響が大きく,農林水産業への影響が小さいことが明らかになった。また,生産額に関しては全国で最大でGDPの約1.3%の取引金額に影響を与える可能性があるとわかった。
  • 更科 孟, 安永 数明
    2019 年 38 巻 S06 号 p. 201-212
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー
    降雪による災害のリスクを減らすため,複合気象計やディスドロメーター,XバンドMPレーダーのデータを用いて,積雪深変化と降雪粒子特性との関連を調べた。富山において降水量に対して相対的に雪が「積もった」ときには,落下速度が小さく粒径の大きい粒子が多く観測される傾向にあることが分かったが,気温や相対湿度の影響はほとんどないことが明らかにされた。 上空では,レーダー反射強度ZHやレーダー反射因子差 ZDR,偏波間相関係数 ρHV の値に幅を持つことが分かった。これらの結果から,樹枝状結晶や偏平な雪片といった降雪粒子の存在が富山における積雪深増加に寄与していると考えられる。
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