抄録
本研究は,東日本大震災が人々に与えた影響のうち,特に人々の「仕事」に対する影響に着目し,その実態と特徴を明らかにした。また,その影響が震災後,人々の意識変化に対する影響も検討した。公開データの二次分析を通して,1震災による仕事への影響は,業種や地域によって異なるのか,2自身への影響が発生したのは個人の属性や立場によって異なるのか,3そうした影響は,人々のその後の意識変化に影響を与えたのか,という3点を明らかにした。分析の 結果,1業種や地域による差異,2自身の属性や立場による差異,3その後の意識変化への影響が確認され,震災による仕事への影響の多層性が指摘された。最後に知見をまとめるとともに,震災の影響の受けやすさは業種といった集団の属性,性別や立場といった個人の属性などによって規定されており,それらに配慮した復興施策が必要であることを述べた。