抄録
災害対策基本法などによって災害対応の関係主体の一つとして位置づけられている民生委員に関しては,防災研究の領域において,これまでに定量的なデータを採取して課題を分析した研究が蓄積されてきていない。そこで,本研究では,兵庫県尼崎市を対象として質問紙による調査を行い,都市部の民生委員における災害時の対応行動や意識に関して課題を明らかにすることにした。その結果,民生委員の属性には偏りがあり,地震時や台風時に即応できていない人が1 ~ 3 割程度いることがわかった。また,担当地区内の要配慮者数を把握できていない人も多く,難病患者に関しては約7 割が「不明」(もしくは無回答)という回答だった。さらに,南海トラフ巨大地震時に要配慮者の支援ができるとポジティブに考えている人は2 割にも満たなかった。このような結果をふまえて,民生委員の機能を今後どのように充実化していけばよいか,インクルーシブ社会の観点から検討した。