抄録
仙台市は,東日本大震災における指定避難所運営に関する教訓から,「地区避難施設(別称:がんばる避難施設)」を開始した。分譲マンションタイプのがんばる避難施設は,地域コミュニティとの連携ができる居住者の自主避難施設のロールモデルになり得ると考えるが,先行研究の標本調査から,居住者の主体的な防災活動がなされている一方で,防災性能に課題があることを明らかにした。そこで,本研究では,分譲マンションタイプのがんばる避難施設の悉皆調査から合計25件を対象に,杜の都防災力向上マンション認定制度の認定基準を適用した場合の防災力の特性を明らかにすることを目的とする。調査結果から,先行研究以外にも旧耐震基準のものが存在することを含め,防災性能のばらつきが大きい状況を明らかにすることができた。また,防災活動は,地域連携の活動が充実している一方で,マンションの内輪の防災活動が充実していない状況を明らかにすることができた。加えて,さまざまな観点から,防災力の特性を明らかにした。以上を踏まえて,仙台市だけに限定しないマンション防災に関する普遍的なあり方として,良質な建築ストックの整備と,地域コミュニティとの連携を含む主体的な防災活動の協働の実現に向けて,建築行政と防災行政の連携が必要不可欠だと提言する。