抄録
本稿では,富士山噴火に伴う溶岩流からの徒歩避難に関する基礎的検討として, 1 .噴火後の時間経過毎の溶岩流の曝露人口の試算, 2 .溶岩流からの徒歩避難の安全性評価手法の構築,3 .構築した評価手法に基づく避難シミュレーションを行った。これらの分析結果に基づき溶岩流から徒歩で安全に避難するための方策について考察した。分析の結果,噴火から3 時間経過した時点での曝露人口は,最大で約2,000人となった。また,避難困難人口は避難開始時間が75分の場合に,最大で約800人発生する結果となった。一方で,避難開始時間が45分の場合は,75分のケースに比べて避難困難者が少なくなった。このことから,溶岩流から徒歩による安全な避難を実施するためには,避難開始時間を短縮することが重要であることが示された。