抄録
【目的】脳動脈瘤の塞栓術において,coil挿入時に過度の負荷が加わると瘤の破裂により重篤な合併症を起こしたり,マイクロカテーテル先端が瘤内から逸脱し不十分な塞栓となったりする可能性がある.我々は,光学的システムを用いてcoilの挿入に伴う力を測定できる装置を開発したので,概要と基礎的実験の結果について報告する.【方法】Y-コネクターを改良し,内部に光学的センサーを組み込んだ.内部を通るコイルデリバリーワイヤーは挿入力により「たわみ」を生じる.LEDから発せられる光によってできるワイヤーの影によりその「たわみ」を同定し,それが定量的な挿入力の値へと変換される.シリコン動脈瘤に対してcoilの挿入を行い,本装置により挿入力を測定した.【結果】正確なcoil挿入中の力の測定が可能であった.また,本装置の使用に際してcoil挿入操作の妨げにならなかった.挿入が成功した場合の最大の挿入力は0.3[N]を超えることがなく,力の2峰性の分布が観察された.【結論】光学的センサーによるcoil挿入力測定装置を開発した.この装置の臨床応用が広がれば,より安全・確実に脳動脈瘤塞栓術が施行できると期待された.