抄録
【目的】頚動脈ステント留置術(CAS)における,MRIによる頚動脈プラーク性状評価とdistal protection deviceの相違による,血栓塞栓症の頻度を比較検討する.【対象・方法】対象は2003年9月以降,当科で施行されたCAS74病変中,術前プラーク性状診断にMRIのMPRAGE法(Magnetization-prepared rapid acquisition with gradient echo)を施行し得た59患者64病変64手技を対象とした.49病変76.6%にGuardwireを使用し(GW群),15病変にAngioguard XPを使用した(AG群).MPRAGE法での信号強度を高信号群,混在群,等信号群の3群に分類し比較検討した.【結果】周術期の有害事象は10手技(15.6%)に認め,そのうち脳虚血性合併症は7例(10.9%)に認めた.脳虚血性合併症の7例中,恒久的神経脱落症状を呈した脳虚血合併症は3例(4.7%)で,可逆性の脳虚血合併症は4例(6.3%)であった.MPRAGEで高信号を呈した 19例中4病変(21.1%)に,混在型を呈した例は18例中3例(16.7%)に虚血性合併症を認めた.MPRAGEで高信号を呈するプラークに対するCASでは,等信号を呈するプラークに比べ有意に脳虚血性合併症を呈する頻度が高かった(P=0.013).【結語】MPRAGEで高信号を有するプラークに対するCASは慎重を要する.特にfilter deviceを用いる際はプラーク性状評価をより慎重に行い,CASの適応を決める必要がある.