抄録
【目的】頚動脈ステント留置術(carotid artery stenting;CAS)後の過灌流状態において,くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage;SAH)を来した1例を報告する.【症例】71歳,男性.症候性の左内頚動脈狭窄(NASCET 95%)に対してCASを施行した.ステント留置後の最小血管径は31 mmで,残存狭窄(NASCET 45%)を認めたが,術後過灌流が懸念された症例であることから,後拡張は行わなかった.治療6時間後に,病変側の局所酸素飽和度の上昇と,頭痛,嘔吐を認めた.その後の頭部単純CTで,左前頭葉および頭頂葉の脳溝に沿って高吸収域を認めた.Single-photon emission computed tomographyで,左前大脳動脈および中大脳動脈領域の血流増加を認めた.治療72時間後の頭部MRI FLAIR画像で,CTと同部位に高信号域を認め,SAHと診断した.CAS 9日後にステント閉塞による脳梗塞を来した.【結論】CAS後にSAHを発症する頻度や機序を明らかにし,その診断・治療方法さらにその予防方法を確立するためにも,今後の症例の蓄積が必要である.