抄録
目的:高齢者施設の施設管理側の意識と室内環境の実態を把握した上で,高齢者施設の室内環境を健康面からみて適正な状態とするための設計上及び運用上の注意点を明確にすることを目的としている.
方法:関東及び関西の129施設に対するアンケート結果から施設管理側の意識を明確にし,設計事例の調査を基にした設計上の注意事項の整理,及び文献調査に基づく室内環境基準値と複数の施設の実測結果の比較から運用上の注意事項の整理を行った.
結果:施設管理者は高齢者の疾病予防などの観点から室内環境の維持管理が重要と意識しているものの,適正な室内環境を実現するための設計及び運用管理に関する知見を有していないために室内環境に問題を有している施設が多い可能性が確認された.
結論:高齢者施設の室内環境を適正に維持するためには,運用段階における室内環境の状態を疾病予防の観点から評価した結果を示すとともに,専門家が高齢者施設の企画段階から運用段階まで適切な助言を行える支援体制を構築することが有効である.