保健医療科学
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特集
地域医療ネットワーク政策と人材育成
奥村 貴史
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 67 巻 2 号 p. 150-157

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抄録

我が国の医療が抱える多くの問題に対して,情報技術が有力な解決策となりうるのではないかと期待されてきた.そこで政府はさまざまな取り組みを続けてきたが,医療機関を越えた患者情報の共有は一般化しておらず,情報技術が医療の質向上に寄与している事例も限定されている.こうした事態が生じた原因の一つとして,医療の情報化を支える人材面での課題が考えられる.そこで,2007年,政府IT戦略本部が定めた「重点計画―2007」において,地域医療の情報化を支える人材育成体制の整備が提言された.

国立保健医療科学院では,この提言に基づき,2010年度より地方自治体職員を対象とした「地域医療の情報化コーディネータ育成研修」を開講している.本研修は集合研修 3 日間,遠隔研修 2 ヶ月間の短期研修であるため,医療,情報,行政の全てに通暁した人材の育成は現実的な目標とはいえない.そこで,地方自治体において医療の情報化に関わる人材間のコミュニティ育成を目標とし,まずは各自治体に生じている課題とその解決策の共有が図られるような体制の確立を目指した.開催後 8 年間を経て,総計280名を超える修了生を輩出し,地域医療の情報化に関わる地方自治体職員間の緩やかなコミュニティを形成するに至っている.また,研修を通じて,地域医療の情報化に関する事例集と我が国における関連事業の網羅的な台帳を構築した.今後,コミュニティの発展を通じた政策分野への貢献が望まれる.

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© 2018 国立保健医療科学院
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