保健医療科学
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特集
日本の保健師による分野横断的支援と今後の課題
―個別支援を例として―
吉岡 京子
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2018 年 67 巻 4 号 p. 350-359

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抄録

公衆衛生看護活動は,その黎明期から個別支援を主軸としてきた.個人や家族の健康レベルの維持・向上に貢献しようとするこの活動は,地域全体の健康レベルの向上の礎となるものである.保健師は,常に時代の変化の影響を受けながら,社会のニーズや健康課題の変遷に対応してきた.近年公衆衛生看護の実践の場では,複雑化した健康問題や生活上の問題(以下,健康・生活問題とする)を抱える「支援困難事例」への関わりが求められている.その背景要因として,1)貧困問題の深刻化,2)社会階層による居住地域の分断化と健康への影響,3)家族のあり方や価値観の変容,4)健康・生活問題の多様化,5)住民同士の交流の変化,6)在留外国人の増加などが複雑に絡み合っている.

支援困難事例の抱える健康・生活問題は社会の縮図であり,その解決のためには行政内外の様々な関係機関と協力することが不可欠である.一般的に行政の多くの部署では,所管する所掌事務のみを行う「縦割り」スタイルを採用している.一方,保健師は分野横断的な健康・生活問題に対応するために,様々な関係機関と協働してきた.この「分野横断的支援」スタイルは,近年厚生労働省が打ち出している地域共生社会の概念の中で,改めてその重要性が強調されている.保健師は地域共生社会の実現に向けて,これまで培ってきた実践知を活かし,関係職種や住民と共に個別支援や地域づくりをより一層推進していく必要がある.また,今後人口減少や公務員の定数削減が加速化することを考慮すると,個別支援で把握した健康・生活問題の発生を将来にわたって予防し,効率的・効果的に解決するための政策形成や,地域の実情に合わせて課題解決を図るための「ご当地システム」の構築につなげていくことが課題である.

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© 2018 国立保健医療科学院
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