2019 年 68 巻 3 号 p. 194-201
20年前以上前にデータサイエンティスト,統計学者,研究者が会合して臨床研究の成果を規制当局に提出するためのデータ標準規格の策定を試みたのが,CDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)の嚆矢である.医薬品や医療機器の安全性を証明するためのデータは,発生源,データ収集,集計方法,内容(語彙)について厳密に管理される必要があることから,CDISC標準の中でも非臨床試験と臨床試験むけにSEND,CDASH,SDTM,ADaM,ODMなどの様々な規格が考案された.その結果,世界各国の規制当局に支持され,臨床研究データの世界的な標準規格の地位を占めるに至っている.日本では独立行政法人医薬品医療機器統合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency PMDA)が,米国ではアメリカ食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration FDA)が臨床試験のデータをCDISC標準で提出することを義務つけている.さらに近年はコンピュータで自動的にCDISC規格に準拠したプログラム,データを生成できるようにCDISC Libraryが公開され,CDISC 360プロジェクトの有志によって実証実験が進められている.そして,CDISCの対象範囲は一般的な臨床研究にも広がり,疾患領域別データ標準であるTherapeutic Area User Guides (TAUGs)という拡張によって,腫瘍,血管疾患,神経疾患,感染症等における臨床研究もカバーされつつある.また,世界最大のFunding Agencyである米国国立がん研究所(National Cancer Institute NCI)は研究者によって提出されたデータを共有するためのプラットフォームであるCancer Data Research Commons(CDRC)を構築し,そこに蓄積されるデータはCDISC規格に準拠するように求めている.以上のようにCDISC標準はデータの品質管理,マネジメントを含む包括的な規格であるが故に,医学領域の各研究領域に浸透しつつあり,新しくかつ安全で有効な医療機器,治療方法の開発の迅速化に貢献している.リアルワールドデータ(RWD)のデータも品質が低い傾向があるが,CDISCをマネジメントの中に組み込んでいくことで品質を引き上げていくことが期待される.また,CDISCは観察研究の利用も考慮している