保健医療科学
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特集
医療・患者の安全および組織危機管理の向上に向けた医療事故の戦略的管理
危機管理・コミュニケーション原則の応用と日本における施策動向
佐藤 元
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 69 巻 1 号 p. 41-51

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抄録

医療事故の管理・対策を向上させる努力は,医療・患者の安全向上および医療の質の向上,また医療機関の戦略的危機管理という二つの側面がある.これらは相互に関連し補完的であるが,異なった政策や取り組みを生んできた.2000年頃より医療安全向上への取り組みは,体系的な欠陥,組織的学習,リスクコミュニケーション,安全文化の醸成などに注力するようになり,結果的にリスク管理から安全管理へ,また安全管理から安全文化・質の向上へと力点の変化が見られる.組織の危機管理という視点はこのように公共政策の中心的課題からは外れてきたものの,その重要性は不変である.医療への期待の増加,さらに訴訟リスクの増大など,組織の効果的危機管理がますます求められる所以であり,医療や医療関係者は十分な備えを要する.事前,事中,事後などの各段階に応じての計画や行動が必要であるが,リスク・クライシス管理における基本的な原則・手段は医療事故管理にも適用されるべきものであり,医療・患者安全の向上にも寄与すると期待される.ここではコミュニケーションが重要な役割を担い,事前準備(危機の予防)が特に必須である.本稿は,危機管理および医療安全向上における基本的事項を簡潔に述べ,医療患者安全の向上,さらに組織危機管理能力の向上として医療事故への対策を捉えた施策の日本における最近の動向について報告する.

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© 2020 国立保健医療科学院
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