2020 年 69 巻 4 号 p. 330-337
「歯科口腔保健分野からみた医科歯科連携の重要性」について,県域(県庁)レベル及び地域(保健所)レベルで筆者が経験してきた事例について事例を紹介するとともに,現在その重要性が認識されている医科歯科連携を円滑に進めるための要件について考察を加えた.
県域・地域を問わず,医科歯科を中心とした多職種間連携を円滑に進めるためには
①誰が(主体)②誰と(客体)③何を(連携のテーマ)④どのように(連携の手法,方策)を明確にするとともに,自己の目的達成を主眼に置くあまりに,連携先の利益を忘れてしまうことのないよう,まず対話を通した相互の信頼関係の醸成を十分に行い,それぞれが置かれている条件や制約をよく理解したうえで,最大限の効果が得られる方策を探求することが肝要であると考えられた.
また,国立保健医療科学院専門課程Ⅰ保健福祉行政管理分野分割前期(基礎)を修了した立場から,同課程での研修が実際の保健所長業務に参考になった事例について述べるとともに,現在全国で保健所長として勤務する歯科医師に対して意識調査を行い,上記のほか,歯科医師の保健所長として感じる成果や課題についても聞き取りをおこなった.その結果,専門課程の受講動機で最も多かったのは「所属する自治体からの勧め」であり,業務に参考となった研修科目は「保健福祉行政概論」「保健統計」「組織管理・運営」「疫学」「地域保健各論」「社会調査論」及び「健康危機管理」であった.
保健所長としてのやりがいについては,「公衆衛生全般の広い視野が持てた」「地域の諸課題に取り組むことができる」「地域のネットワークが広がった」「首長と対等に議論することができる」などの意見があった一方,課題,困難さについては「歯科医師でも保健所長の任が果たせることを示す緊張感がある」「医師資格が必要な業務を行う上で苦心している」などが示された.さらに今後後進の歯科医師が保健所長に就任する場合に必要な制度・体制・研修を尋ねたところ「(歯科保健以外の)様々な分野の業務を経験すること」を挙げた者が最も多く,他に「未経験業務を補強する選択型研修の実施」「実際の公衆衛生業務を通して学ぶ」などの意見が出された.